第52回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第52回研究例会

日時:2015年4月4日(土曜日)15時~18時10分

   15:00~16:30発表姜多映氏(東京大学大学院人文社会系研究科修士課程)
   16:40~18:10発表大沼巧氏(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。
*当日は土曜日で建物内に入れない可能性があります。(4時までは開いているはずですが)その時には研究室の電話03-5841-3636に御連絡下さい。



▽発表者①:姜多映氏(東京大学大学院人文社会系研究科修士課程)

◎題目:「甲午改革期から大韓帝国期における任官文書様式の変遷に関する研究」

【発表要旨】


 朝鮮では、甲午改革期(1894-1896)を経て、中央行政機構の改革が行われ、それによって内閣の開設と官制改革も推進された。勅任官、奏任官、判任官などの官職の新設とともに官吏を任命する任官文書の様式も大きく変化することになった。国家の重要な公文書の一つである任官文書は、官制変化の過程を探ることができるという研究価値を持っている。任官文書が変化を遂げた最大の理由は、既存の中国官制の影響下にあった朝鮮がその対象を日本に変えたことによるといえる。

 これまで、文書が最も多く現存している朝鮮時代に関する研究は盛んであったが、甲午改革期から大韓帝国期(1894-1896)までの文書をとりあげて、その様式や運用実態を詳細に解明した研究はほとんど存在しない。

 そこで本研究では、甲午改革期から大韓帝国期までの実際の任官文書を用いて、当時の文書の様式と発給システムを解明することを第一の課題とする。また、任官文書の様式がどのように変化したかを具体的に究明するために、当時公布された法令条項と、それに関連する日本の法令条項の導入に関しても考察する。

 韓国に散在する甲午改革期から大韓帝国期までの任官文書を可能な限り収集し、文書に記載されている発給先・受給者・官職名・御宝・印章などを綿密に検討し、当時急変した情勢の中で官制がいかに変化したかを探るとともに、任官文書の様式の変化の過程を明らかにしたい。  また、甲午改革期から大韓帝国期までの任官文書の様式変化における明治時代の文書様式の導入にも言及して、今後、日本の位記と官記を調査・発掘するなどの研究を進め、両国の任官文書の様式を比較研究するための土台としたいと考える。



▽発表者②:大沼巧氏(東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

◎題目:「大韓帝国期における海税徴収構造の変化と朝鮮社会」

【発表要旨】


 大韓帝国期(1897~1910)には、徴税に関するさまざまな法令や章程が制定された。このことは、徴税にかかわる多様な勢力に対応を迫るものであった。そのうち、田税や戸税に関しては、地方での反発や、多くの付随作業が伴うという財政的な理由などにより改革自体が中途で挫折したが、田税や戸税を除く諸々の税(雑税)に関しては、比較的長期的視点に立って制度的な変化を見ることができる。

 その中でも、本研究では海税を扱いたい。それは、大韓帝国期以前の管理体系が複雑であり、大韓帝国期になると海税の調査・徴収過程における多くの問題が表面化し、それらを記述した文書を通じて地域レベルでの動きの一側面を論じることができると考えたためである。

 以上のことを踏まえて、本報告では大きく3つのことを扱いたい。

 一つ目は、海税の性質に関して扱う。海税の管理が一元化しなかったのは、当時の海税概念が不明確で、支配層と民の間などで共通認識が確立していなかったことが一因として挙げられる。そこで、制度上の海税規定や当時の人々の認識を通じて、海税の概念について考えたい。

 二つ目は、海税に対する各地方レベルでの対応を扱う。中央財源の拡大が志向された大韓帝国期には、中央レベルでの海税への介入が強化された。ここでは、その具体的様相とそれに対する地方の動きを考察するため、中央の各地方レベルでの海税政策とそれに対する地方の対応を論じたい。

 三つ目は、一つの具体例として慶尚南道沿海部を扱いたい。この地域では、中央から派員が派遣されて以降、所有権の問題などを巡って、多様な勢力の葛藤が見られた。その具体的様相をおうことで、大韓帝国期の社会の一側面を明らかにしたい。

 以上の作業を通じて、本研究では海税の制度的変化とそれに伴う地方社会の様相の一面を論じたい。

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