第65回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第65回研究例会

日時:2018年6月16日(土曜日)15時~17時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。


▽発表者:ベル裕紀氏(法政大学非常勤講師)

◎題目:メディア教育が編む世界―韓国における移住労働者を対象としたメディア活動団体を事例として

【発表要旨】

 1990年代半ばより韓国では市民団体の支援を受けた「外国人労働者」の示威が行われ、研修生制度や未登録滞在(不法滞在)者の法的な地位の問題や労働問題などが顕在化した。こうした運動は2004年の制度改正をめぐる明洞での籠城闘争に発展した。移住労働者の問題がクローズアップされていった背景には、同時期に拡大したインターネット新聞や人権映画祭などのメディア活動と総称される新しい運動方式の影響が強い。

 韓国におけるメディア活動は、民主化以降、社会運動が断片化されていく過程で存在感を増していった。法-制度の面でも進歩政権の下で2001年にはKBSがパブリック・アクセス枠の導入を開始したのを契機として各地にメディアセンターが作られるとともに、様々な運動団体でメディア教育が行われるようになった。メディア活動は、21世紀の民主主義社会において、文字のリテラシー同様に、映像を含めた「メディア言語」のリテラシーが不可欠であるという理念のもとで、移住民を含めたマイノリティや地方在住者や高齢者など、発信能力の低い人々にメディア教育を行っている。メディア運動と移住民運動は早くから関わりを持ってきた。

 本発表では、安山市と富川市で、活動している移住労働者を対象としたメディア活動団体を事例として取り上げる。メディア教育の場は、いわゆる需要と供給が一致しているようなものではない。例えば、メディア教育を行う活動家は、カメラや編集ソフトの使用法よりも、映像のカットを使って物語を紡ぐための技術を重視しているのに対し、メディア教育を受けに来る移住労働者の多くは機器の使用方法の習得を目的としている。また、メディア教育を行う活動家自身も、長期的には社会-政治的な変革を志向していながら、移住労働者自身が自ら表現したいことを表現することを最も重視している。メディア教育や映像の上映などの団体の活動への参加を通じて、活動家の意図したこととはズレながら、移住労働者たちが関心、志向性を変化させ、移住民自身の活動に変化を与えていく様を報告する。


韓国・朝鮮文化研究会 事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学大学院人文系研究科 韓国朝鮮文化研究室内