第23回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第23回研究例会

日時:2007年4月14日(土曜日) 午後3時~7時

【発表1】

▽発表者:本田 洋(東京大学大学院人文社会系研究科)
○発表題目:地場産業の形成と技能工の生活実践:韓国南原地域における木器製造の事例から

 本発表では、特定の場所と関連付けられて構築・再構築される様々な様態の資源に依拠する小商品生産(ここでは仮設的に、地場産業をこのように定義する)が、近現代の韓国地方社会においていかに形成され、展開してきたのかを、南西部南原地域における木器製造の事例を通じて、特に熟練技術者(技能工)・起業家のライフヒストリーとの関係に重点をおいて考察する。「木器」とは木を素材とする器物・道具(木工品)の総称であるが、特に近年の韓国で「木器」という場合、轆轤挽きの木地に漆塗り(あるいは代用塗料による塗り)を施した器物を指すことが多い。今日、南原地域は、この木器のなかでも、特に儒礼の祭祀に用いられる専用の器物、すなわち祭器の生産地として全国的に知られている。「南原木器」の起源は、林産資源が豊富な智異山北麓の山内(今日の南原市山内面)・馬川(咸陽郡馬川面)一帯での、パル(主として仏教僧が用いる組食器)、祭器、その他の日用器物・道具の生産にたどることができるといわれている。ところが両地域での木器製造は、植民地期の若干の技術改良を経つつも、1960年代初頭以降は、産業化に伴ってプラスティック・ステンレス製の代替器物が普及し、地元での原材料の調達も難しくなったことにより、一度は衰退の途をたどった。これが1980年代以降、その間の技術改良・インフラ整備と新たな産地の形成を基盤とし、祭器需要の急増を直接の要因として、南原の地場産業として再度成長を遂げたのが、今日の「南原木器」である。各時期において地場産業としての木器の製造を成り立たせていた諸要因と、技能工・起業家の生計・経営の実践の具体的な諸相の検討を通じて、場所と結び付けられた諸資源、ならびに生産に関与する諸主体の生活実践が、韓国の地方社会における地場産業の成立といかに関係しているのかを明らかにしたい。

【発表2】

▽発表者:仲川裕里(専修大学)
○発表表題:「両班化」の諸相と儒教

 朝鮮・韓国社会に見られる社会上昇志向ないし社会上昇現象を概念化した「両班化」については、これまでさまざまな議論が行なわれてきたが、これらの議論はかなり錯綜したものとなっている。その原因として、本来区別されるべきいくつかの異なった現象に対して同じ「両班化」という語が使われてきたことが考えられる。「両班」という語自体がもともと多義的であるうえに、「~化」という接尾辞には異なった意味が含まれているため、この二つを組み合わせた「両班化」という語はいろいろな解釈を許す多義的なものとなっている。主体や内容が異なった現象であるにもかかわらず、同じ「両班化」という語を用いて議論が展開されているため、「両班化」をめぐる議論が錯綜するのではないだろうか。この発表では「両班化」という語で表されている複数の現象を整理し、それぞれの現象における儒教の役割の再検討を試み、さらに社会的上昇とイデオロギーの関係について検討を行なう。

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟・738番教室

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