第34回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第34回研究例会

日時:2010年4月10日(土曜日) 午後3時~5時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階 738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

当日は土曜日で建物内に入れない可能性があります。(4時までは開いているはずですが)その時には研究室の電話03-5841-3636に御連絡下さい。

【発表】

○発表者:田中理恵子(東京大学総合文化研究科超域科学専攻文化人類学)
▽発表題目:韓国芸能の継承の現在-都市部におけるプンムルの「お稽古」を例に-

 発表者は現在、東京近郊のプンムル演奏団体に携わっている。団体に参加すると、これまでの生活では出会うことのなかった人々と接触し、練習や演奏-つまり「お稽古」(以下、稽古)を行うことになる。見知らぬ人を結びつけ、人々の拠り所となるような、こうした芸能(そもそも芸能と呼べるのか)の在り様は何なのだろうか。およそ従来の文脈からは離れていると思われるプンムルの在り様を、現代社会における都市的な芸能の諸相と捉えるならば、人と芸能との関わりについて、これまでの議論とは異なる側面から検討できるのではないだろうかと考えている。

 朝鮮半島に古代から伝わるといわれる「プンムル」は、植民地期や近代化に伴い衰退しながらも受け継がれ、今日では、その一部が重要無形文化財として指定されるなど、「伝統」文化の一つとして再定義されている。加えて、プンムルから派生したサムルノリといった新たなジャンルも誕生する一方で、国外でも広く行われるになった多義的な芸能であるといえる。本発表では、伝統文化と称される民俗芸能が韓国内においてどのように受け継がれてきたのか、また受け継いでいるのか、その「継承」の在り様に焦点を当てて発表したい。ここでいう継承とは、わざが受け継がれるという狭義の意味ではなく、1.古代から今日まで受け継がれてきた長期的なプロセスであり、2.今日における継承の生成としての稽古を指している。

 1.については、プンムルの歴史的背景のうち、次の五つの側面に注目する。
  a.狭義の儀礼におけるプンムルの起源的な様相について、
  b.放浪芸能者集団の成立による民衆への普及について、
  c.重要無形文化財の指定の影響について、
  d.舞台化、作品化によって国外でも公演するようになった海外への広まりについて、
  e.日本を例とした海外での受容について。
 プンムルの様相は時期によって異なっており、韓国社会において長く継承される過程を、決して一枚岩の様相ではなく、動態的な位相として捉えていく。

 2.については、プンムルの継承の生成としての稽古の一場面を取り上げる。一般にどの技芸の世界でも、師匠が示す規範に弟子が従わなければ継承行為は成立しないと考えられる。そこで、プンムルの口伝による継承方法を確認した後、弟子が「まねる」「くりかえす」行為によって技芸を身につけるプロセスを検討することで、表面には表われにくいプンムルの継承の動態的な在り方を検討する。
 こうした稽古の断片が積み重ねられることで、プンムルの継承が行われていくと考えられる。
 なお、研究の方法は、人類学的な参与観察に基づき、2001年から韓国、日本における予備調査を開始し、現在も断続的に行っている。ただし、実際にプンムルの技芸の保有者に弟子入りをし、芸能に携わる人々が担う立場や役割(継承を受ける、初心者に助言する、共演する、技芸を教える等)を経験することを重視している。こうした方法を取ることで、通常の参与観察ではこぼれ落ちてしまうような事象に焦点を当てていきたい。

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