第45回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第45回研究例会

日時:2013年6月1日(土曜日) 15時~18時10分

15:00~16:00発表①鄭育子氏
16:10~18:10発表②古田富建氏

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階 738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。
*当日は土曜日で建物内に入れない可能性があります。(4時までは開いているはずですが)その時には研究室の電話03-5841-3636に御連絡下さい。



▽発表者①:鄭育子(東京大学大学院博士課程)

◎題目:「継承語としての韓国語教育に関する研究―ある在日韓国学校の事例を中心に」(仮)

【発表要旨】

 韓国学校は、韓国の正規課程の学校として認可された教育機関であり、現在、世界15か国に30カ校存在する。在日韓国学校は4校あり、このうちの3校は日本の学校教育法第一条に定められた「学校」(「一条校」という)でもある。本研究は、在日韓国学校「一条校」のうちの1校を調査地とし、そこでの韓国語教育の在り方を捉え、韓国政府が推進する韓国語教育政策との関係を照射することを目的としている。

 発表者は、2011年9月~10月にかけて、在日韓国学校のひとつであるK校で調査を行い、在日コリアンの教師たちを対象とするインタビューを中心に、学校行事と授業の参与観察、在日コリアン学生への個人インタビューや数人の学生との座談会によって資料を得た。K校が日本の「一条校」を選択したのは3校のうち最も遅い時期であったが、「一条校」として日本の学生たちにも門戸を開放しながら、この10年に満たない期間に急激な変化を見せている。

 これまで韓国学校では、韓国語を継承語として教育してきた過程がある。在日コリアン教師たちの韓国語への対し方を見ると、韓国語学習にいたる背景や動機はさまざまでありながら、継承語として韓国語を捉え、学び、教育するという共通点があった。彼らの語る継承語としての韓国語は、言語能力のみに重点が置かれるのではなく、必然的に歴史を伴って想起される対象であった。しかし、「一条校」になって以来、在日コリアンに対する継承語としての韓国語教育という枠組みに外国語として韓国語を学習する日本の学生たちが加わり、教師たちがその対応に試行錯誤を繰り返すようになっている。

 学校という空間に民族という明確な境界を見出すような環境ではなくなった今、学生たちの韓国語に対する認識も民族構成の変化と共に多様化している。彼らのもつ認識と、さらには韓国政府の政策も加わって、韓国語教育に対するそれぞれのまなざしが学校空間で交差する。

 本発表では、こうした現状のなかで韓国語教育への解釈と受容について、その変化と多様性を中心にみていきたい。




▽発表者②:古田富建(帝塚山学院大学)

◎題目:「統一教の死生観と死者救済:清平祈祷院を中心に」

【発表要旨】

 統一教(世界基督教統一神霊協会)は文鮮明(1920-2012)によって創設されたキリスト教系新宗教である。植民地解放後に教勢を伸ばし、韓国キリスト教界においては「異端」の象徴とされる団体であるが、60年代から反共産運動を活発に行い時の政権の庇護を受ける。60年代から活発な海外宣教をおこない現在は韓国国内よりも海外の方が信徒が多く、日本では「霊感商法」「合同結婚式(祝福結婚式)」などマスコミを賑わした。

 統一教は80年代から教団の成長が鈍化して行くが、90年代末頃から教団内外の動きに合わせて教義の大きな変容が見られ始め、キリスト教色が弱まり民族主義を前面に出しながら怨霊や先祖解怨などのシャーマニズム的なスピリチュアルな世界(霊界)を強調させていった。

 本発表は教団の90年代の後半の教義変容が見られ始めた頃に設立され、現在は教団の中心的な機能を持つ清平祈祷院(天宙清平修練苑)における儀礼や教説について一次資料を用いながら特に死者救済に焦点を当てながら明らかにする。

 韓国キリスト教の特徴としてその周辺に「祈祷院」と呼ばれる施設が存在してきたことは周知の事実である。清平祈祷院は韓国キリスト教の祈祷院文化を継承しながらも、キリスト教が苦手としてきた非信者の死者との交流や解怨という独自の世界観が見られる。

 清平祈祷院では「恨霊」(=信者に祟る非正常な死者)と「先祖」(信者の直系の肉親)という2つのタイプの死者の解怨を行っており、死者たちは信者にとり憑きながら病で信徒を苦しめたり、自らの恨を解こうとする。

 清平祈祷院の儀礼や教説から統一教の恨霊と祖先解怨の世界観を韓国の伝統宗教である儒教・巫俗そして韓国キリスト教の祈祷院と比較しながら考察する。

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