第54回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第54回研究例会

日時:2015年12月5日(土曜日)15時~17時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。
*当日は土曜日で建物内に入れない可能性があります。(4時までは開いているはずですが)その時には研究室の電話03-5841-3636に御連絡下さい。



▽発表者:李京燁氏(木浦大学校教授)

◎題目:「全羅道クッの多様性に関する再認識と議論拡大の可能性」

使用言語:韓国語

【発表要旨】


 全羅道クッといえば、通常シッキムクッを思い浮かべるであろう。その中でも、無形文化財に指定されている[珍島シッキムクッ](全羅北道重要無形文化財第72号)が真っ先に挙げられる。無形文化財に指定された全羅道のシッキムクッには、この他、[湖南タンゴルクッ](全羅北道無形文化財第33号)、[全北アンジュンクッ(読経)](全羅北道無形文化財26号)、[順天サムソリャンクッ](全羅南道無形文化財第43号)、[新安シッキムクッ](全羅南道無形文化財第52号)、[高興ホンゴンジクッ](全羅南道無形文化財第58号)などがある。これ以外にも様々なクッが伝承されている。巫俗の多層的で多面的な様相を把握するためには、文化財に指定された特定の資料に固執するのではなく、前後左右の脈絡を考慮した接近が必要である。様々な資料を集め、比べ合わせながら総合的に眺める必要がある。

 現代の韓国社会では、急激な社会文化的な変動とともに巫俗の伝承環境が変化しつつある。以前に比べるとクッの伝承基盤は弱まっており、研究者として以前と今の状況の差をどのように認識しクッの研究方向を模索すべきか、自問せざるを得ない。なかでも、新たな資料の発掘、未公開資料の確保、既存の資料の再解釈などが必要とされる。これを通してクッの多様性の意味を具体的に確認することが可能となる。さらには、従来のクッ研究の偏狭性を克服し、新たな議論の構図を模索し、画一化された最近のクッには失われたクッパン特有の複合性を再構成できると期待する。

 本発表では、全羅道クッの多様性を確認するため、クッの構成方式と圏域別の特徴を調べ、マウルクッ(村祭)の分布、ならびにこれとチプクッ(家祭)との連関性などについて検討する。そして具体的な事例を挙げることにより、議論の拡大可能性を例示する。第一に、新たな写真資料を元にアジェン(牙箏)がクッパンに導入された過程について実証的な分析を行なう。アジェンのクッパンへの導入は、クッの伝承者らの創造的な適用力やクッの伝承の動態性を示す事例といえる。第二に、未公開の録音資料の採録を通して発見した新しい創造神話素を紹介し、議論の拡大可能性について検討する。

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