第57回研究例会
日時:2016年6月11日(土曜日)15時~18時10分
会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室
最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html
赤門を入り右手の建物です。
▽発表者:15:00〜16:00 発表①韓惠善氏(東京大学大学院人文社会系研究科修士課程)
16:10〜18:10 発表②金広植氏(日本学術振興会特別研究員PD)
▽発表者①:韓惠善氏(東京大学大学院人文社会系研究科修士課程)
◎題目:「現代韓国の地域社会における定期市場—観光人類学の観点から—」
本発表は、現代韓国の地域社会における定期市場を観光人類学の観点からどのように捉えるべきかについて考察するものである。
定期市場は韓国の地域住民にとって重要な買い物の場所であったが、1976年からの30年間で閉市数が全国で40%以上に達するなど、今は衰退の一途をたどっているようにみえる。実際、定期市場の消滅を予測する者もいる。生活パターンの変化や交通・通信の発達に応じて買い物の方法が変わり、定期市場を利用する人の割合は大幅に減少した。さらに、大型マートやSSM(Super Supermarket)、インターネット通信販売の登場によって、買い手にとっての定期市場の魅力も減退したと考えられる。
このように日常的な購買の場所としての比重が低まっているのは事実であろうが、他方で定期市場が経済的機能に留まらない様々な機能を担ってきたという指摘もなされている。大型マートなどの新たな小売形態が普及するなかで、既存の定期市場の経済的機能(商品の取引、農産物収集、金融機能など)と非経済的機能(文化、娯楽、地域社会維持など)には、それぞれどのような変化が起こっているのであろうか。本発表では、特に文化的価値に注目し、観光人類学の観点から現代韓国の定期市場の役割をどのように定義することができるかを考えてみたい。主たる資料としては、本年2月に実施した設問調査とインタービューの成果、ならびに韓国で公刊された論文や報告などを用いる。
▽発表者②:金広植氏(日本学術振興会特別研究員PD)
◎題目:「韓国併合直後に実施された朝鮮総督府学務局「口碑文学」調査の意味—小倉進平関係文書を手掛かりに—」
【発表要旨】
発表者は2011年に朝鮮総督府学務局報告書「伝説童話調査事項」(以下、1913年報告書と略記)を発掘し、翌年にそれを韓国で公刊し、その意味を分析してきた。分析の結果、1913年報告書は朝鮮総督府が刊行した『朝鮮童話集』(1924年)と深く関わっていることを実証できた。
1990年に児童文学家孫東仁は、朝鮮総督府『朝鮮童話集』(朝鮮総督府、1924年)、沈宜麟『朝鮮童話大集』(漢城図書株式会社、1926年)、朴英晩『朝鮮伝来童話集』(学芸社、1940年)を取り上げ、近代「三大伝来童話集」として評価したが、孫東仁はその三冊全てを直接読んでいない可能性が高い。1990年代後半、孫東仁の言説に対する検証なく、「三大伝来童話集」という言説は常識化し、朝鮮人の二冊はいずれも日本に所蔵されていた蔵書が韓国で復刻され、朝鮮総督府(植民地主義)VS朝鮮語学者沈宜麟・独立運動家朴英晩(抵抗民族主義)という構図が定着・拡散されていった。
発表者は先行研究における二項対立を実証的に読み直し、まず、朝鮮総督府童話集(1924年)はドイツ文学者田中梅吉が編んだ事実を明らかにし、「三大伝来童話集」という枠組みにとらわれず、植民地期に日本語で刊行された60冊余りの資料集を発掘・分析してきた。また、1913年報告書「伝説童話調査事項」という補助線を引いて、新たな議論を導き出したいと考えている。1913年報告書は小倉進平の主導で行われたと思われる。本発表では最近公開された「小倉進平関係文書」(学習院大学東洋文化研究所所蔵)の資料を検討し、1910年代における動向を再検証したい。
韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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