第59回研究例会
日時:2017年2月4日(土曜日)15時~17時
会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階723号室
最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html
赤門を入り右手の建物です。
▽発表者:神野知恵氏(東京芸術大学音楽学部楽理科教育研究助手)
◎題目:「近現代農楽の興行芸能化 門付け芸能から舞台芸能へ」
本発表では、韓国の農楽が1950年代以降に急速に興行芸能化していくプロセスを当時の新聞記事や演奏者のライフヒストリーを通じて明らかにしていく。
農楽は2014年にユネスコの人類無形文化遺産代表リストに記載され、韓国を代表する伝統芸能としての地位を確かなものにしている。しかし一般的に見聞きされている農楽の上演形態はほとんど「パンクッ」と呼ばれる、広場での技巧的な演奏に限られ、元来旧正月などに家々で演じられてきた門付け形態の演奏や、多様な儀礼の音楽としての農楽の姿はほとんど知られなくなった。もちろん現在でも村祭りの農楽は伝えられているが、いつ頃、どのような過程を経て現在のように技巧的な公演形態が「農楽」というジャンルの中心になっていったのだろうか。
発表者の博士論文では、1950年代に全羅北道で生まれ全国的に大流行した「女性農楽団」と、その代表的奏者である羅錦秋(ナ・グムチュ、1938年生まれ)のライフヒストリーを主題とした。それまで男性の担い手による村落の儀礼芸能であった農楽が、女性の職業的演奏者による興行芸能になっていったプロセスを探った。この際にライフヒストリーの裏付けとして行った解放以降の新聞記事の調査を通じて、農楽に大きな変化を与えたであろう様々な要因が明らかになった。例えば、1950年代に李承晩政権では「迷信打破」政策により巫俗や民俗信仰、村祭りなどを悪習として徹底的に非難し禁止する一方で、農楽を大々的に政府の行事に利用し、ソウルでさかんに大会を開き、国の芸術として舞台に上げ、 海外に紹介する事業を展開し始めた。本発表では、こうした要素がそれまで村祭りで演じられてきた農楽の伝承の在り方にどのような影響を与え、興行芸能化に作用していったのか、またそれ以前の日本統治時代からの影響にはどういったものがあるのかなどを検討していく。
韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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