第61回研究例会
日時:2017年6月3日(土曜日)15時~17時
会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室
最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html
赤門を入り右手の建物です。
▽発表者:金志善・鹿倉由衣氏(東京藝術大学音楽学部教育研究助手)
◎題目:植民地朝鮮における歌舞伎公演の実態をめぐってー『京城日報』の歌舞伎記事を手掛かりにしてー
本発表は、植民地朝鮮(1910~1945)における歌舞伎公演の実態について当時在朝鮮日本人にとって欠かせない情報誌であった『京城日報』(1906~1945)の歌舞伎関連記事を手掛かりに、在朝鮮日本人の音楽文化の享受の一側面を明らかにすることで、これらの公演が日韓近代音楽史においてどのような意義を持っていたのか考察するものである。
植民地朝鮮には日本人の移住が増加したことに伴い、在朝鮮音楽家(邦楽家も含む)のみならず、日本本土からの音楽家による公演(伝統芸能含む)も実現していた。植民地朝鮮には朝鮮在来の音楽に加え、西洋音楽(クラシック)と日本音楽(邦楽)、大衆音楽(流行歌)が混在する状況が生み出されていた。日本の植民地支配を経験した韓国の音楽史を正確に理解するためには、当時の時代性に留意しつつその多様な姿を多元的に検討する必要がある。
発表者は、『京城日報』には音楽記事・広告が多く掲載されていることに注目し、それらの抽出作業を行った。その中には、邦楽関連記事が約5000件あり、歌舞伎に関する記事は約160件見つかった。『京城日報』には朝鮮で行われる歌舞伎公演情報のみならず、各公演に対する劇評やコラム、「内地」日本における歌舞伎界の動向情報などが掲載されている。歌舞伎を分類する際、公演の規模から「大歌舞伎(大芝居)」・「小芝居」に分けることができる。実際に朝鮮では大歌舞伎の興行も行われたが、同時に小芝居も「歌舞伎」という名で数多く公演されていた。記事には、「上方歌舞伎」と「江戸歌舞伎」を、「関西・大阪歌舞伎」と「関東・東京歌舞伎」という表現で記述されており、女歌舞伎(少 女歌舞伎含む)に関する記事も掲載されている。実際に朝鮮で行われた公演には、日本本土でも人気の高い歌舞伎役者であった片岡我童、中村扇雀、市川右団次、市川猿之助、中村吉右衛門、中村歌扇などによる巡業公演もあった。また、これらの巡業公演は戦時期になると戦時協力、慰問の性格が強くなっていった。
このような状況から、本発表ではこれまで明らかになっていない朝鮮における歌舞伎公演について『京城日報』の記事を手掛かりにその実態に迫る。
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