第18回研究大会 of 韓国・朝鮮文化研究会


韓国・朝鮮文化研究会第18回研究大会


□ 日時:2017年11月4日(土) 10:00~17:30

□ 場所:神田外語大学3号館3階3-302・3-304教室

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□ プログラム(仮)

  10:00~12:00
 一般研究発表
   曺佑林「1920~30年代の雑誌言説に見る女性の「断髪」」
   柳煌碩「現代韓国社会における「父母教育」の政策的推進と問題」
   金貴粉「『槿域書画徴』制作の意図とその意義」


  12:30~13:00
 会員総会

  13:10~17:30
 シンポジウム「病いと医療」
(趣旨説明:秀村研二。発表者:野崎充彦・愼蒼健・澤野美智子)


  18:00~20:00
 懇親会(大学構内・アジアン食堂「食神」)


□ シンポジウム「病いと医療」

  本シンポジウムでは韓国朝鮮社会における病いと医療の問題をとりあげる。病いはどの時代でもどの社会でも避けては通れない人間の運命である。その病いをどのように認識し、対処しようとしてきたかを、歴史と文化の側面からとりあげ理解を進めたい。病いは「語られるもの」としてあるのだが、近代的な医療ではそれを病気や疾患として客観的に取り扱おうとする。伝統社会での病いのあり方から、近代的医療制度の下での葛藤、現代における病いのあり方などについて考えたい。

  朝鮮の伝統的な社会における病気の理解は、王朝では中国の影響もあり体系的な理解が試みられてきた。許浚による医書『東医宝鑑』(1613)は中国の医学を基礎としながらも朝鮮独自の医学知識を取り入れて、病気の原因から臨床までを網羅した集大成として編纂され、中国や日本にも大きな影響を与えた。一方、民間では王朝の医療の影響を受けつつも民間(民俗)医療が宗教的な側面を一方では持ちつつ流布していた。巫俗では独自の病因論をもって呪術的な儀礼がおこなわれてきたし、現在でも一定の評価を受けてさまざまな儀礼がおこなわれてもいる。仮面劇でも病気(特に疫病)が扱われ、最後に面を焼くことによって祓っていたことは知られている。またキリスト教においても伝統的な病因論とキリスト教とを融合した病気治しの祈祷院が見られるのは特徴的だろう。

  伝統的な医療と近代になって入ってきた西洋近代医学とが、どのように出会い解釈され、定着していったのかの変容過程も興味深い。そこには陰陽五行思想から解剖学的知識への身体観の変容があったはずである。植民地期の帝国の医療制度や衛生制度とキリスト教宣教団体を中心とする西洋の医療、それらと伝統的な医療体系がどのようにせめぎあったかである。今日の韓国では伝統的な漢方(韓方)の医療体系が、近代医療制度の中で独自のものとして存在を示していることにも注意をしたい。

  病気の持つ文化的側面にも注意を払いたい。例えばファッピョン(火病または鬱火病)として分類されるような病気に対する認識のあり方は興味深い。ある種の症状がファビョンとされる一方で、ある状況におかれた人がファッピョンとされる症状を発症させてしまうからである。ファッピョンを発症させるのは多くが女性であり、女性がおかれている社会文化的脈絡から理解されなければならないだろう。また病いや医療の問題は身体や健康への認識のあり方とも関連が深い。薬や健康食品への関心の高さとしてそれは現れているように思われる。

  シンポジウムの構成としては、歴史学の観点から民間医療を研究する野崎充彦さんに「朝鮮時代の民間医療知識の諸相」(仮題)という主題で、朝鮮近代医療史の観点から伝統医学との問題を扱う愼蒼健さんに「伝統医学における自画像の形成と展開:その<鏡>との関係」という主題で、そして文化人類学の観点から女性と病いの問題を論ずる澤野美智子さんに「「ファッピョン」としての乳がん:現代韓国社会における女性と病いの関係」(仮題)という主題でそれぞれ発表して頂く。韓国朝鮮社会における病いと医療の問題に様々な角度からから光を当てることにより、人々がどのように病いを認識し、病いと向き合い、生きてきたかを明らかにすることが出来るものと考える。会員の皆様の積極的な討議への参加をお願いしたい。(秀村研二)



報告者と発表題目:

・野崎充彦「朝鮮時代の疾病と医療観」

・愼蒼健「伝統医学における自画像の形成と展開:その<鏡>との関係」

・澤野美智子「「ファッピョン」としての乳がん:現代韓国社会における女性と病いの関係」

韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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