第64回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第64回研究例会

日時:2018年4月7日(土曜日)15時~17時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。


▽発表者:田中美彩都氏(九州大学大学院博士後期課程、日本学術振興会特別研究員(DC1))

◎題目:旧韓末養子制度をめぐる社会の実態—新聞記事の分析を中心に—

【発表要旨】

 現在の韓国の家族制度は「儒教的」と評される一方で、非儒教的な要素をもはらむ。報告者は、現代の家族制度と朝鮮後期に一般化したとされる「儒教的」家族制度の間にひそむ連続性/非連続性を考察するため、祖先祭祀の継承を目的として同宗の男子を養子を対象に行われた継後養子を中心に、朝鮮の養子制度が近代に被った変化に着目している。

 本報告では、旧韓末の『皇城新聞』および『大韓毎日申報』の広告欄と雑報(社会記事)欄における養子関連記事を分析し、旧韓末の養子制度の運営実態の一端を把握することを目的とする。とくに広告欄には養子を含む家族関係の異動などを広く知らせるための個人広告が多数掲載されており、実社会での家族をめぐる問題の発生過程やその解決方法、行動主体などが浮彫りとなる。

 既往の養子制度研究の多くは朝鮮後期に注目し、法典の変遷や、王朝の公的記録や族譜などから把握される養子制度の運営実態などを明らかにしてきた。旧韓末の新聞記事に現れる養子制度の実態は、養子関係の成立や解消の条件などにつき、上記研究で明らかになった朝鮮後期の実態と傾向をほぼ同じくする一方、新聞や新式裁判などを活用した問題解決、日本人との金銭問題による罷養など旧韓末特有の状況も看取される。

 こうした分析結果は、1908年から植民地期にかけて日本人の主導により実施された慣習調査との関わりからも考察する必要がある。慣習調査の成果は、植民地期の法の制定や運用、裁判判決などで重要な意味を持ち、また当該期の家族制度を知る史料としても一部活用されてきた。ここで、当初の慣習調査が直接の観察対象としたのは変化しつつあった旧韓末の状況であり、朝鮮後期の「伝統」ではないことに注意する必要がある。これまで等閑視されてきた旧韓末の養子制度の運営実態の把握を通じて、慣習調査の内容やそれに基づく法政策をより批判的に検討することが可能となるだろう。


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