第67回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第67回研究例会

日時:2019年2月2日(土曜日)15時~17時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。


▽発表者: 武藤 優氏 (九州大学韓国研究センター学術協力研究員)

◎題目: 韓国国楽の「前史」をめぐる一考察 ―1930年代における李王職雅楽部の活動を中心に―

【発表要旨】

 今や世界的な芸能大国として認知されている韓国において、韓国の伝統音楽を一挙に担う機関に国立国楽院が挙げられる。悠久の歴史を持つ韓国国楽(朝鮮の雅楽)は、日韓併合以前には掌楽院という組織において旧王家の祭礼・宴礼楽を掌握し、植民地期には李王職雅楽部(1925年に李王職雅楽隊から改称)として更に市井に活動の場を広げていった。

 植民地期朝鮮における韓国の芸能(公演芸術)をめぐる研究には、当該期に芸能が経験した歴史を「暗黒史」として一括りにする傾向が多分にある。この植民地時代=韓国芸能(公演芸術)の暗黒期という言説は解放直後から散見され、とりわけ韓国国楽をめぐっては、植民地期に李王職雅楽部(現在の韓国国楽院)に所属し後の国立国楽院を立ち上げていく創立メンバーである楽人らによって、それらの言説が流布され、後の研究者らも先人らの言説を踏襲する形をとっている。そこには常に、日本による植民地支配からの解放と同時に、悪政によって抑圧されていた朝鮮の芸能(芸術)もその支配から解放・独立を迎えたのだという語りが用意されている。しかし、韓国国楽の「前史」に当たる李王職雅楽部についての研究は、以上のような言説を踏まえた上で、各種の奏楽活動に言及した記述がなされてはいるが、当時の活動実態の全貌が明らかにされているとは未だ言い難い。殊に李王職の管轄組織であった宮内省をはじめ、日本の宮内省式部職楽部(日本の宮廷雅楽を司る部署)や皇室との関りについては、残存する史料が限定的であることも相まってか、まだ十分には解明されていないのが現状である。

 本報告では、この韓国国楽の「正史」から零れ落ちてしまった演奏の実態について、とある一人の朝鮮人音楽家の業績を手掛かりに、植民地期朝鮮において朝鮮雅楽が求められた役割について検討することとする。


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