第71回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第71回研究例会

日時:2020年2月8日(土曜日)15時~17時

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階738号室

最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html

赤門を入り右手の建物です。


▽発表者:柳川陽介氏(早稲田大学非常勤講師)

◎題目:朝鮮人蒐集家たちの陶磁器認識  1930~40年代を中心として

【発表要旨】

 本研究は、小説家として活躍した尚虚李泰俊(1904~?)の散文を手掛かりとして、近代朝鮮における収集家たちの陶磁器に対する認識を論じるものである。1930年前後に本格的な創作活動を始めて以降、10余年間で計19冊の単行本を刊行した李泰俊は、名実ともに朝鮮近代文学史を代表する作家の一人である。李泰俊は小説家として創作を続ける一方、『朝鮮中央日報』学芸部長と文芸誌『文章』(1939-41)主幹を歴任し、朝鮮文壇の「産婆」役として活躍した人物でもあった。

 発表者は全集に収録されていない散文を通して、植民地期朝鮮において李泰俊が梨花女子専門学校博物室主任を務めた事実と、陶磁器蒐集家として様々な文化人と交流を重ねていた事実を確認した。これは李泰俊研究という作家論の次元を越え、近代朝鮮における陶磁器蒐集家の交流様相を考える上で、重要な示唆を与えるものである。韓国の美術史学界では、植民地期に活躍した美術品蒐集家や陶磁器の流通形態が、研究テーマとして取り上げられつつある。しかし、管見の限りでは陶磁器蒐集家の散文に着目した研究は行われていない。

 そのため、本研究は李泰俊の散文を手掛かりとして、近代朝鮮における陶磁器認識と蒐集家たちの交流様相に注目する。具体的には李泰俊と交流を深めた咸錫泰、裴正国、金瑢俊、金煥基と、その周辺で活躍した高裕燮、朴秉来、韓寿景が1930~40年代に朝鮮語媒体に発表した散文を考察対象とする。かれらの散文を分析することで、城北洞を中心に形成された蒐集家たちの交流様相と、陶磁器を鑑賞する姿勢を明らかする。また蒐集家として親交を深めた李泰俊と裴正国の関係が、解放空間のなかで出版社白楊堂を媒介に再浮上する過程についても触れたい。


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