第80回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第80回研究例会

 運営委員会での検討の結果、COVID-19の感染拡大に鑑み、第80回研究例会も引き続き、Web会議サービスのZoom上で下記の通り実施しました。


日時:2022年4月2日(土曜日)15時~17時

開催方法:Zoomミーティング

発表者:諸昭喜(国立民族学博物館グローバル現象研究部助教)

題目:女性疾患とヨモギの活用に関する医療民俗誌

 本発表の内容は産後に現れる病とそれに対して、ヨモギにどのような意味が付与され、活用されているかを分析する。今まで発表者は産後の病として「産後風」という韓国の民俗疾病について紹介してきた。漢方と民間医療、そして経産婦の間で幅広く認識されているこの病を通じて、韓国での医療体系、女性の身体観、疾病観念などを簡単に扱った。そして、ヨモギはこの産後風の予防や治療のため、通常民間で使われる薬剤の一つである。今回の発表では病の紹介とともに、これらの延長線上で異常に対する解釈、または発病という現象を予防するための方法、改善するための回復、治療法などの「解決とその分析」の部分まで拡張していく。

 ヨモギは、朝鮮半島の田畑、山野のどこにでも植生していて採りやすいので、民間では「なじみ深い、親近」のイメージのある食材であり薬草でもある。韓国ではヨモギの活用をめぐって知識が形成されている。季節や収穫した地域、食べる部分によって、ヨモギは毒にもなり、薬になったりもする。また、人の体質によって、ある者には無用の物になり、他の人には万病薬になったりもする。子宮が重視される妊娠、出産、産後の期間の女性には重要な民間医薬だが、生理前の女子や男性には効能がないと考えられてもいる。ヨモギは、朝鮮戦争の時期に経験した「飢え」の象徴であり、生き残るための生存食糧として意味されるが、皮肉なことに、ヨモギは最高の天然薬(食)として語られる。特に、19世紀の朝鮮の医学書を通じて、ヨモギは「女性向けの薬」として特化される。

 「胎(子宮)」を安定させる、腹を暖かくする、「冷(気)」を排出すると知られるようになり、妊娠期から産後に至るまで予防と治療を担当する「女性のための物」として次第に位置づけられることになる。女性への特化性を持つヨモギは、現在の韓国で女性を主なターゲットにして、スープや食材料としてはもちろん、灸、生理用ナプキン、よもぎ蒸し、お茶、入浴制、化粧品、胃腸薬などに多様に使われてい

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