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第95回研究例会
運営委員会での検討の結果、対面とWeb会議サービスのZoom上でのハイブリッドにて開催しました。
記
日時:2026年2月14日(土曜日)15時~18時
開催方法:東京大学東洋文化研究所 第一会議室+Zoomミーティング
発表者①:金誠(札幌大学) 題目:朝鮮のスポーツにみる植民地主義と脱植民地主義
本報告はスポーツに着目し、植民地期のとりわけ総力戦体制期から解放直後のスポーツがどのように展開され、またスポーツ関係者ら(スポーツ組織の会長、理事あるいは言論人、指導者、選手らを含む)が植民地期から解放直後にかけてどのような活動を行ったのかを実証し、考察するものである。
韓国における植民地期のスポーツは朝鮮民族にとって弾圧の時代であり、抵抗を表すものとして研究、記述されてきている。確かにそうした側面があったことは間違いない。そして解放後のスポーツは帝国日本の支配と抑圧からの解放の象徴として提示されている。その一様な物語のなかで植民地期から解放後のスポーツは政治性から解き放たれ、礼賛されるべき対象となってきた。ただ果たして脱植民地化のなかのスポーツはそうした単線的な物語に回収することが可能なのだろうか。このことを再考するために植民地主義から脱植民地主義のなかのスポーツを、時代を隔てた断絶ではなく、時空間の連続したなかで再定義化されていった実践活動であることを考察の軸に据え、スポーツ関係者らの活動を明らかにしていきたい。
—スポーツ関係者らの「支配」と「解放」に着目して—
発表者②:山下慶(鹿児島大学人文社会科学研究科 客員研究員)
題目:軍政期韓国の教育における軍事文化とその涵養
−高校教育経験者の事例を中心に−
本研究の目的は、朝鮮戦争休戦後の1953年から民主化以前の1987年までの時期に、韓国社会において形成・涵養された軍事文化とは何か、当時の高校教育経験者へのインタビューを通じて明らかにすることである。韓国社会において「軍事文化」という語は日常的に用いられ、しばしば兵役経験やそれに伴う社会的慣習として理解されてきた。しかし軍事文化はそれにとどまらず、朝鮮戦争休戦後から民主化以前にかけて、国家の制度や政策、とりわけ教育を媒介として体系化され、人々の生活経験の中に内面化・涵養されていった側面を有している。
本研究では、戦闘技術の習得を目的とする教練のような「軍事教育」と区別し、規律、忠誠、集団主義、上下関係といった軍隊式価値観や行動様式を学習させる教育を「軍事的教育」と定義した。そして、当時の高校教育が学生の経験としてどのように受容され、定着していったのかを分析し、高校教育を通じて形成された軍事文化について検討した。調査対象は、1947年から1968年生まれで、民主化以前に高校教育を経験した男女である。分析にあたっては、当時の教育理念を示す国民教育憲章と、先行研究において整理されてきた「理想的な軍人」の特徴を基軸とし、インタビューで語られた教育経験との照合を行った。
その結果、韓国の高校教育における軍事文化とは、軍事政権を支え、それを成立・再生産する社会的な価値観や慣習として機能していたことが明らかとなった。また、軍事的教育とは、そうした価値観や態度を育成するための具体的な活動や営みであったと位置づけられる。さらに、この軍事文化の形成背景には、朝鮮戦争を起点とする貧困の経験とその記憶が深く関与しており、戦争によって敵対関係に置かれた北朝鮮の存在が、軍事文化の涵養を促進する一因となっていたことが示唆された。
韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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