第24回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第24回研究例会

日時:2007年6月9日(土曜日) 午後3時~7時

【発表1】

▽発表者:崔 梅蘭(東京大学大学院)
○発表題目:東学と東学運動に関する一考察―「教祖伸冤運動」を手がかりとして―

 1860年に崔済愚によって創建された東学は、特に韓国の宗教学界では、「民族宗教」とされることが多い。しかし、「民族宗教」という概念で、東学の性格を捉え切れるのか、疑問である。
 ところで、東学は1892年から1893年にかけて公州集会・参礼集会・報恩集会など一連の集会を開き、所謂「教祖伸冤運動」を展開した。そのなかでも注目すべきは、1893年4月から5月までの報恩集会にいたって、東学は「斥倭洋」というスローガンを掲げたことで、集会は宗教的なものから政治的なものへ変質または転換したと言われていることである。また、教祖伸冤運動において東学が一貫した「隠忍自重」の無抵抗主義を貫いたため、「民族宗教」として評価される一方で、その役割は「不徹底」で、「消極的」「敗北主義的」であったと評価される傾向がある。
 本報告では、宗教社会学方法を用いて、まず東学の成立過程における教理の体系化・合理化過程をみることにする。次に、東学の宗教理念・信仰体系に視点を当て、教祖伸冤運動における東学の「斥倭洋倡義」というスローガンが、世俗的秩序との緊張関係によって部分的、ないし全面的に打ち出されたことを、信仰の次元から一貫した筋道で示すことを試み、東学徒たちの行為を解明したい。資料は東学教門側の通文や上訴文を用いることにする。最後に東学の「宗教倫理」が世俗的秩序をどのように意味づけていたかを考察することを通じて、東学が「政治」領域と関わったり、実践的な活動のなかで「政治」権力と衝突する局面において、東学徒の行為がいかに方向づけられているかを捉え、新たな東学理解の可能性を模索したい。

【発表2】

▽発表者:劉 明基(韓国・慶北大学校)
○発表表題:朝鮮族と日系人ー外国人労働者としての「民族」

 韓国における中国朝鮮族と日本における日系人は民族的同質性を基にして「母国」に帰って外国人労働者として働いているという共通点を持っている。また彼らは韓国と日本で外国人労働者の主流を占め、労働市場では勿論のこと、社会的にも周辺的な存在として留まっている現実においても共通点がみられる。
 しかし外国人労働者としての朝鮮族と日系人に投影される「民族」の姿には相当な差異があるように思われる。この差異は、一つには外国人受け入れに関する国家政策が「民族境界」と「民族関係」を作為的に作っていった過程で生じたものであり、もう一つでは「移住」という状況のもとで形象化された「民族に対する歴史的記憶」とその記憶が「帰還」を通して現実化される過程で経験された間隙(ずれ)の差異によるものと考えられる。
 今回の発表では、朝鮮族と日系人の帰還が「単一民族国家」韓国と日本にもたらした民族境界と民族関係の変化を概観し、韓・日両国の差異点とその背景について議論してみたい。この議論のために、まず韓日両国における外国人労働者及び朝鮮族・日系人の一般的状況を概括し、その後で外国人受け入れと出入国管理政策に反映されている「国籍」と「民族」の意味、民族に対する歴史的記憶と帰還後の経験、そしてその結果としてのエスニック関係の分化、または均質化の問題について検討してみたい。

会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟・738番教室

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