第22回研究例会
日時:2007年2月10日(土曜日) 午後3時~7時
【発表1】
▽発表者:通堂あゆみ(東京大学大学院)
○発表題目:植民地朝鮮における帝国大学法文学部の機能
京城帝国大学(以下京城帝大と略す)に関する先行研究は大学の設立過程や、設立初期の大学機構にのみ注目したものが多い。特に「東洋文化の研究」を重視する大学という建学理念のもとに設立が計画されたため、朝鮮総督府の調査事業等との関係から京城帝大は朝鮮統治の忠実な代弁者であった、あるいは植民地の最高エリートを体制内化するという役割を果たしたという結果が導かれた。だが、実際に京城帝大が植民地朝鮮においてどのように機能したかは、大学機構の構成員である教官あるいは学生の動向を押さえて論じられなければならない。教官や学生について、具体的なデータ分析を行うことによって京城帝大の性格や意義を再検討しようということがこの発表の目的である。
京城帝大は建学当初、法文学部と医学部という2つの学部でスタートした。このうち、建学理念として「朝鮮研究」「東洋文化の研究」という強い期待と使命を負ったのは法文学部である。このため、本論文は考察の対象として重点的に法文学部を取り上げる。
【発表2】
▽発表者:山内文登(東京大学東洋文化研究所)
○発表表題:植民地期朝鮮における音声記録の歴史民族誌
植民地期の朝鮮で制作・販売された音盤は、総分量にして約6,500枚(両面換算で約13,000面、内容の重複含む)、1面3分換算で約650時間に上る。このうち、現在何らかの形で聴取可能なのは4分の1程度と思われる。韓国語で一般に「留声器音盤」と呼ばれるこの音声の記録は、その呼称が示唆するように当該時期を生きた朝鮮の人々の「肉声」を刻んだほぼ唯一のオーラルな資料であり、植民地期朝鮮の音のドキュメントとも呼びうるものである。本報告では、この記録を生み出した録音という実践と、それを複合的に規定した社会構造との交錯した関係性に関する歴史民族誌的な素描を行いたい。これは自ずから、如上の音のドキュメントの不可避的な限界性に関する資料批判となるが、ねらいはむしろ資料の外延を一先ず曝すことで、その限定的な可能性について積極的に展望する方向性にある。
会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟・738番教室
韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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