第10回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第10回研究例会

日時:2003年12月6日(土曜日) 午後3時~7時

【発表1】

発表者:六反田 豊(東京大学)

タイトル:朝鮮後期済州島民の漂流と出身地詐称

発表概要:
 朝鮮時代の済州島民は、沿岸海域での漁業、半島本道への物資輸送や商行為など、多種多様な目的で活発な海上活動を展開していた。その結果、船が遭難して異国へ漂流・漂着する事例も多数発生した。本報告では、まず、そうした済州島民の異国への漂流状況を朝鮮後期を中心に概観する。さらに、朝鮮後期には、異国に漂着した済州島民が漂着先での官の取り調べに際して出身地を詐称することが一般化していた事実に注目し、その理由や歴史的背景について考察を試みたい。

【発表2】

発表者:愼 蒼健(東京理科大学)

発表題目:先端医療技術受容と韓国文化論

発表概要:
 現代韓国は日本と比較して、先端医療技術(移植医療、生殖医療、美容整形医療など)に対してより受容的であると言われる。そして、こうした先端医療は日本文化にはなじまないが、韓国文化にはなじみやすいという主張が日本の識者によって広められている。儒教=宗教説を強固に主張する加地伸行氏をはじめとして、生殖医療や美容整形医療の受容に男系中心主義の伝統を、また移植医療の受容にはキリスト教文化を、という紋切り型の韓国文化論が多くの論者によって展開されている。
 私には、こうした韓国文化と他文化との比較は実のところ補足に過ぎず、韓国文化の特殊性という先取りされた主張を後から補強するためのものという印象を拭い去ることができない。
 本発表では、韓国社会が先端医療技術に対して受容的であるとはどういう根拠に基づくものなのかという初歩的な問題から出発し、受容問題を韓国文化論で展開しようとする論者の主張を批判的に検討する。その上で、医療技術の受容をどのような切り口から議論できるのかについて仮説を提示し、研究会の参加者と議論してみたい。
【追記】なお、「先端医療技術受容と韓国文化論」の近年の動向の知る上で、以下の文献を代表的なものとして紹介しておく。
[1] 淵上恭子「人工生殖時代の朝鮮儒教―現代韓国における生殖テクノロジーと祖先崇拝」国際宗教研究所編『現代宗教2003-特集:宗教・いのち・医療』東京堂出版、2003年、90-116頁。
[2] 第8回厚生科学審議会先端医療技術評価部会 生殖補助医療技術に関する専門委員会議事録(1999年10月5日) http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9910/txt/s1005-1_18.txt
[3] 加地伸行『沈黙の宗教―儒教』ちくまライブラリー99、筑摩書房、1994年。

会場:東京大学本郷キャンパス・赤門総合研究棟738号室

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