第9回研究例会 of 韓国・朝鮮文化研究会

 第9回研究例会

日時:2003年6月7日(土曜日) 午後3時~7時

【発表1】

発表者:山本 華子(東京藝術大学博士課程)

タイトル:李王職雅楽部について

発表概要:
 植民地期、朝鮮の宮中音楽を掌握した機関、李王職雅楽部(1925~1945)は、日本の宮内省の管轄下にあった。のちに国立国楽院に引き継がれる当機関は、韓国音楽史において最も記述が少なく、また研究対象として扱われることも稀であった。日本に残された第一次資料と李王職雅楽部出身者への聞き取り調査を元に、李王職雅楽部の一端を解明することにする。

【発表2】

発表者:須永 敬(信州大学特別研究員)

発表題目:日韓国境域における『聖母』神について:その対峙と交錯に関する一考察

発表概要:
 朝鮮半島南部から対馬・壱岐を経て北部九州に至る地域には、「聖母(seong-mo/sho-mo)」という名の母神を祀る「聖母祠/聖母神社」が認められる。これらの聖母神はそれぞれ「新羅・高麗始祖王母」/「神功皇后(八幡神=応神天皇の母)」という国家的母神としての信仰をあつめており、「倭寇征討」/「三韓征伐」といった互いに対峙する伝説を有している。この聖母神については、従来「日本」「韓国」それぞれにおいて古来の母神信仰として論じられてきたが、両者はともに12 世紀の記録に登場しており、うつぼ船伝説を伴いつつ「伝説的な王の母」を祀るなどの共通点も認められる。また、「国境」を越えて行き交う人々によって互いの聖母神が記録されていた事実などを考え合わせれば、両者が全く別個に展開を遂げたとは考えにくく、むしろ日韓の「国境域」ともいうべき地域における対峙と交錯の歴史のなかに生成・展開した特徴的な母神信仰であったと捉えることが可能であろう。本発表では、北部九州の聖母神社と朝鮮半島南部の聖母祠について、それぞれの史的展開と信仰の実態についての概略を述べるとともに、その関係性の分析から日韓の「国境域」ともいうべき地域における母神信仰の対峙と交錯の様相を中心に論じてみたい。
 なお本報告は、博士(歴史民俗資料学・神奈川大学)学位論文「日韓国境域の母神信仰史に関する民俗学的研究」(2002年11月提出)の一部を再構成したものである。

会場:東京大学本郷キャンパス・法文1号館216号室(2階)

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