第42回研究例会
日時:2012年12月1日(土曜日) 14時~17時10分
14:00~15:00発表①原田静香氏
15:10~17:10発表②新城道彦氏
会場:東京大学(本郷キャンパス)赤門総合研究棟7階 738号室
最寄り駅:本郷三丁目駅(地下鉄丸の内線、大江戸線)
■アクセス:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/map01_02_j.html
■建物位置:http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_08_02_j.html
赤門を入り右手の建物です。
*当日は土曜日で建物内に入れない可能性があります。(4時までは開いているはずですが)その時には研究室の電話03-5841-3636に御連絡下さい。
【発表】
○発表者①:原田静香(東京大学大学院博士課程)
▽発表題目:「韓国人青年の『エギョ』行為研究-ソウル・全州・大邱の大学生の事例を中心に」
本研究は、韓国人青年の日常的相互行為の中で生起する「エギョ」行為に焦点を当て、これを対人パフォーマンスとして分析するものである。
韓国国内主要辞書では「他人から可愛く見える態度」として定義される「エギョ(애교:愛嬌)」は、現象としては決して目新しいものではない。しかし、近年、相互行為の場に加えて各種マスメディアやオンライン空間で「エギョ」の頻繁な流通が見られ、同時に、「可愛く見える態度」の枠に収まらない「エギョ」の発現形態そのものの発展・変容が確認できる。
現在、韓国人青年らの相互行為の場で展開するエギョは、「普段とは異なった、意外性を持つ可愛い姿」として、①(パラ言語を含む)対面状況における発話、②ジェスチャー及び身体的接触、③文字及び記号という3種類の媒体を通じての発現が確認でき、これら諸形態によって自身の可愛さを見せる行為を「エギョを発動させる行為」、すなわち「エギョ行為」と総称する。本研究は、その中心的な行為主体と想定される青年らの相互行為および語りからエギョ行為に接近し、遊戯傾向性や使用される語彙、オンライン空間との影響関係などに注目しつつ、韓国社会の中に位置づけようと試みる。
今回の発表では、発表者が2011年7-8月と2012年9月にソウル・全州・大邱にて男女大学生及び大学院生を対象に実施した調査資料に基づき、エギョの「5W1H」、すなわち、その発現形態・発現状況・発現する関係を示すと共に、エギョ行為の発展・流通に不可欠な存在であるネットワークメディア及びオンライン空間の果たす役割との関連を中心に紹介したい。
○発表者②:新城道彦(新潟大学)
▽発表題目:「近代国際条約としての韓国併合と前近代の礼観念」
朝鮮王朝は19世紀まで清国の冊封下にあり、両者は宗属関係にあった。しかし、日清戦争の結果、朝鮮王朝は清国から「独立」し、皇帝を戴く大韓帝国となる。
日本は1910年に韓国を併合し、皇帝一族を王公族として国内に編入した。先行研究ではこの王公族の創設をもって日本が前近代の東アジアの伝統に回帰したかのように論じられてきた。しかし、その論拠は併合時に発せられた詔書の「前韓国皇帝ヲ冊シテ王ト為シ」の「冊シテ」を「冊封」と読んでいるだけで、実証性に乏しい。
併合において日本が注意すべきは列強の承認を得ることであり、そのためには西欧の主権国家体制の理念にもとづいて外交を行う必要があった。それゆえ、併合は近代国際条約の形式を踏んで「合意」が演出されている。
しかし、だからといって日本が前近代の礼観念を完全に無視したとは考えない。なぜならば天皇は併合と同時に韓国に勅使を派遣し「王冊立」の儀式を実施しているからである。ただし、それは決して先行研究が言う「冊封」に回帰するためではなかった。むしろ日本は礼観念の主従関係を逆手にとって日韓が「対等」であるように装い、主権国家体制の理念を強調したり、韓国側の自尊意識に配慮したとみる。本発表では併合交渉や「王冊立」の儀式における韓国皇帝と勅使の面位(座席)に着目してこのような仮説を論じる。
韓国・朝鮮文化研究会 事務局
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